大崎善生「編集者T君の謎」

編集者T君の謎―将棋業界のゆかいな人びと

編集者T君の謎―将棋業界のゆかいな人びと

聖の青春 (講談社青い鳥文庫)」「将棋の子 (講談社文庫)」の大崎善生のエッセイ。棋士のことやら、将棋に関わった人々や、それ以外の人々などに関して書かれている、かな。印象に残ってたシーンは…

村山聖がなくなった後、ライバル関係にあり、村山から一方的に嫌われていた、佐藤康光が「あの車は当分処分できなくなりました」という話。その車は村山が酔っ払ったときに送っている最中にゲロを吐いたという車。

あとは、「これも一局」ということば。将棋が終わった後に感想戦というものを行うのだが、別の手を指したときには別の将棋になる場合に「これも一局でしょう」ということがある。その手をすすめることは別の将棋になるのでこれ以上検討する必要がないときに使う。これを人生にちょこっとあてはまめて書いているところ。あのとき、あ〜だったらどうなったかな〜と思って突き詰めて考えることは無意味で、「それはそれで違った人生だったろうな」で終わらせる、ということ。

聖の青春 (講談社青い鳥文庫)」がどういう経緯で出版されたのかもわかった。

期待はずれだったのは、タイトルにもなっている「編集者T君」の話が少なかったこと。てっきりT君の話がメインなのかと思っていただけに残念。ちなみにT君は人生で「人間失格」の一冊しか読んでいないのに編集者になれたとか、将棋のことはまったくわからないのに、将棋雑誌の編集者をやっているという…ちなみ、一冊しか読まないで編集者になったというネタは「パイロットフィッシュ (角川文庫)」で使われている。